ダーチャ・マライーニ来日の報告6 札幌ー4
ダーチャ、北海道大学を表敬訪問
6月18日14時からの北大表敬訪問は、ダーチャ、望月、唐渡、石田(通訳)、北明の5名で行いました。
北大は寶金清博総長の都合がつかないということで、山本文彦理事・副学長(文書館館長)が応対しました。事前に「交渉の場ではないので案内板、モニュメントのことは言わないように」と総務部長にクギをさされ、時間も15分と言われていました。
訪問メンバーの紹介後、ダーチャさんの来日以来の行程を簡単に説明し、「それでは最初にダーチャさんからお話させていただきます」と進めました。細かい打ち合わせはしていませんでしたが、ダーチャの後に唐渡先生、望月さんに一言ずつ話してもらおうと思っていました。
ところがダーチャが話し始めるとほぼ20分、休みなしです。全体15分が25分に伸び、同席した事務方から「予定時間を過ぎ、次の予定もありますので」と言われ、唐渡先生、望月さんは話すことなく終わりました。
ダーチャは初めに「今の時代は消費文化の時代だ。イタリアでもひと月に70,000冊の本が出版されるが、約半分は捨てられる。私たちは消費文化の時代において、大切なものを忘れてしまいがちだ。しかし、忘れてはならない記憶がある。それが宮澤・レーン事件であり、『心の会』である。ぜひそれらを具体的な形のあるもので残し、後々の人がそれを見て思いだし、語り合えるようにしていただきたい。」と話し始め、山本副学長は「私は西洋史を研究している。歴史を学ぶことはよりよい未来、よりよい社会を築くためだ。おっしゃることは理解できる。」と答えました。
会談はこのようなやり取りが続き、最後にダーチャはサインの入った『 Vita mia 』を贈呈し、退室する前に4名の記念写真を撮って終わりました。
会議室を出ると本部前の広場で新聞社や迎える会のメンバーが待っていました。「先ほどの面会があなたの旅の最後のイベントでした。今すべてのイベントを終えた感想は?」という問いに、ダーチャはおよそ次のように答えました。
「特に写真展は心が動かされた。不幸なことに、この場所は事件の証言となるものが何もない。たとえば、私たちが2年間住んだ教員官舎は壊されてしまった。だから、写真と文書に残された記憶に心動かされた。そのいくつかは知っているものだったが、知らないものもあった。私にとっては、父や宮澤さん、そして当時の友人、心の会のメンバーと共に写る写真を見ると、とても感情を動かされる。それらは重要なのだ。日本の人びとが外国人と関係を築いていた好例だから。そのことは何も悪いことではなかった。経済的なつながりだけでなく、知的、文化的、社会的な関係を持つことは必要なことだ。心の会はその好例だった。それは今日でも言えること。だから、宮澤・レーン事件に取り組むことは重要なのだ。若者は彼を知り、戦争で何が起こるのかを知るべきだ。」
帰りの車の中で「私は言うべきことをしっかり言ったわ」とダーチャは語りました(望月さん談)。写真展見学と北大表敬訪問、札幌の最終日をいい形で終えました。


